ご挨拶


 医動物学(Medical Zoology)とは、原生動物より高等な人体に病害を及ぼす生物を扱う学問であり、一般的にはヒトの寄生虫と衛生動物を対象とします。終戦後には感染率が80%を超え、国民病とまで呼ばれていた寄生虫症は,その後の経済成長によって私達の周囲からは姿を消したように見えます。しかし、日本国内の寄生虫は決して消滅などしておらず、国外ではむしろ患者数は増え続けていることから、高齢化と国際化が進んだ将来の日本でいつ寄生虫症の患者数が再度増加に転じないとは限りません。

 私たちは中国地方の医学部の唯一の寄生虫学研究室として、寄生虫疾患のコントロールを通じて全人類の健康的な生活の獲得に寄与する事を目指し教育・研究活動を日夜行っています。毎年40万人もの人命を奪うマラリア原虫についてはゲノム編集や遺伝子組換えで原虫を改変し、宿主・寄生虫関係の解析を行っています。また、宿主内で排除を免れつつ生存できるマンソン裂頭条虫の分子機構から、免疫学的な方向でヒトの健康にとって有用な知見を引き出す試みも行っています。また、鳥取県におけるマダニ媒介感染症に対してマダニの調査も行っています。当分野では、生命科学科の学生・院生も活発に研究しています。

 教育面では、医学科の基礎感染学と保健学科(検査技術科学専攻)の病原寄生虫学演習を通じて、医師および臨床検査技師を目指す学生に寄生虫疾患の確かな知識と見逃さないセンスを身につけてもらう事を目標に教育を行っています。また、地域医療への貢献として、鳥取県日野郡江府町の健康づくり活動に地域医療研究部と共に参加して活動を行っています。

 臨床面での貢献として、医療機関からの寄生虫疾患についての臨床相談も積極的に受け付けています。

 

大槻 均(文責)